「思いわずらうことなく愉しく生きよ」って、そうやって生きられたらどんなにいいことか。
この言葉は主人公の3姉妹の父が書いた、犬山家の家訓なわけですが、やはり現実にはそう簡単なことではなく、3姉妹もそれぞれに思い悩みながら暮らしているんですね。
この作品ではDVの問題が取り上げられているのですが、江國 香織さんらしい文体と世界観で重たくなりすぎることなく読むことができました。
妻に暴力をふるう多田邦一という人物に同情する気はしないけれど、失うことに対する恐怖とか不安とかいうものはわからないでもない。
だからといって、力ずくで引き止めてもけっきょく不幸になるだけなんですよね。
「二人で幸せになるか、二人揃って不幸になるか、どっちかなのよ」
と、麻子が言うとおりでもあり、
喪失感は、巨大だった。巨大だったが、それは埋めようがないことを、治子は知っている。放っておけばいい、と治子は考えている。喪失感はただそこに「在る」だけで、それに囚われたり浸ったりする必要はない。
という考え方のできる治子はずいぶん強い人なのだと思う。
治子の考え方のほうが好きですけどね。
失うことを恐れていてはどこへも行けない。
部屋ばかりか人生まで、「まぎれもなく育ちゃん一人の気配」であることに、自分はもう倦んでいるのだ
と考え、
「ここからでてみたいの」
と思う育子が、自分としては一番感覚が近いかな。
思い返してみると、江國 香織作品に出てくる男って、なんだか頼りなくて情けないですね。
ま、でもひさしぶりに江國 香織ワールドを堪能させていただきました。
面白かったです。













