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2006年11月04日

本の読み方 -スローリーディングの実践-

BOOK

先日、いつものように本屋でふらふらしていてふと目にとまったのがこの本、「本の読み方 -スローリーディングの実践-」です。
著者は平野啓一郎さん。
数年前に「日蝕」で芥川賞を取って話題になった人です。
ちなみにこの「日蝕」、買いましたが最初の数ページで挫折しました。
この本を買った当時の僕は物語が扱っているテーマとか舞台とかに馴染めなくて、物語世界に入っていけなかったんですね。

ま、それはいいとして。
そんな出会い方をしてしまった作家さんの本だったことと、「スローリーディング」というコンセプトに惹かれました。

「本の読み方」なんてあらたまって言われると、読書家を自認している人などは特に、今更そんなこと教えられるまでもないと思われるかもしれませんが、逆にたくさん本を読んでいるという人にこそお奨めしたい本です。

実は、僕も本を読むのが好きで毎週末本屋や古本屋で数冊の本を購入し、今では買った本が本棚に納まりきらず、床に山積みになっていっているという状況だったりします。
本屋に行くたび読みたい本が見つかって、それでも読む時間は限られているので今日買うのは我慢しておこうとか、買ったはいいが積読状態になってしまったりしてしまいます。
そうなると、もっと速く本が読めたらな、と思うこともしばしばですが、この「スローリーディング」で主張されていることは徹底して「アンチ速読」です。
「量より質の読書」を提唱しているのです。
たとえば、速読をこんな風に断じています。

一ヶ月に本を100冊読んだとか、1000冊読んだとかいって自慢している人は、ラーメン屋の大食いチャレンジで十五分間五玉食べたなどと自慢しているのと自慢しているのと何も変わらない。速読家の知識は、単なる脂肪である。それは何の役にも立たず、無駄に頭の回転を鈍くしているだけの贅肉である。決して、自分自身の身となり、筋肉となった知識ではない。

読んだら古本屋すぐ売って、そのお金で新しい本を買うという人もいるかと思いますが、僕は買った本を売るということがあまり好きではないのでそれはしません。
自分に影響を与えてくれた本を手放してしまうというのがなんとなく寂しいということもありますし、それよりなによりまた読みたくなったときに売ってしまうとまた買わなくてはならないのが嫌だからです。

この本でも「リリーディング」の重要性は強調されています。
時間を置いて(置かなくてもいいですが)何度でも読み返すということが大事だということですね。
さっき僕が挫折したといった「日蝕」も今読めば面白く読めるかもしれないし、大学時代に面白いと思って読んだ本でも、今読めば当時面白いと思ったこととは別の面白さや、深みがわかるようになっているはずです。
そうでなければ、何も成長もしていないし、変化もしていないということですから。
それに映画などでもそうですが、物語の全体像を知らずに読むのと、それを把握しながら登場人物たちの科白や行動などに注意しながら読むのとでは、まったく見えるものが違ってきます。

それから、もっともだと思うのは「作者が何年もかけて熟考して、時間をかけて書かれた作品をほんの数時間、速読すれば数十分で読んで理解したと思うのはあまりにおこがましいことではないのか」ということです。

それは、極上のボルドーをイッキ飲みするような、恥ずかしい、下品なことじゃないだろうか。

確かにその通りだと思います。
そんな読み方は作者にも失礼ですし、何より自分の身にもならない。

では、具体的にどのように読めばいいのか。
ちゃんとこの本では実際に例としていくつかの作品から抜粋して、その読み解き方を「実践編」として解説してくれています。

そのひとつとして、本に傍線を引っ張りながら読むという方法があります。
これは、本をきれいに読みたいという人にはちょっと抵抗があるかもしれません。
僕もその一人です。
が、この方法がかなり有効なのも事実です。
実際、読み終えてから印象的な一文をあとから探したくなっても、見つからないことが多くてチェックしておけばよかったと思うことは何度もありますし、リリーディングの際にも、前に読んだときにどのような読み方をしたのかを思い出しながら読むのにも役立ちます。
人間は忘れる生き物ですから。
これをすると売れなくなるし、人にも貸せなくなるんですが、ま、関係ありませんね。
もともと売るのは嫌いだし、人に薦めるときも「買え」といえば済むことですし。

今、あらためて部屋を見渡してみると、我ながら本の多さに驚きます。
自覚的に本を買い始めてから売っていないわけですから、これが僕の読書の歴史になるわけです。
これを機に、この本たちをもう一度ゆっくりと読み直してみようかなと思っています。

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