新選組を取り上げた小説といえば、司馬遼太郎の「燃えよ剣」や「新選組血風録
」がまず思い出されるし、池波正太郎といえば「剣客商売
」や「鬼平犯科帳
」なんかがまず思い出されるわけで、池波正太郎と新選組という組み合わせはあまりイメージがなかったんです。
よくよく考えてみれば、時代小説家なのだから新選組を取り上げても何もおかしいことはないんですが。
それほど新選組のファンというわけでもないし、幕末の話は面白いけどマニア的なはまり方をしてるわけでもない僕が、ひさびさに新選組の小説を手に取ったのはそんなわけもあったのでした。
新選組といえばたいてい、近藤勇、土方歳三、沖田総司、のこの3人が中心となった話が多いんですが、この「幕末新選組」は永倉新八が主人公というところが他書とは少し毛色が異なっている。
新選組の本を読んだことがあれば、永倉新八という人物は知っていると思うけれど、彼を主人公とした小説はあまりないのではないでしょうか。
永倉新八は幕末の動乱を生き抜き、大正時代まで生きて天寿を全うしています。
しかも、新選組でのことをいろいろと書き残したりしているので、その方面でテレビや本に取り上げられることが多いようですね。
新選組研究の第一級の資料ですし。
それはそれとして、この本を読んでいると、池波正太郎が永倉新八に対して好意を持って描いていることがよく伝わってきます。
近藤勇らの陰に隠れてなかなか深いところまで人物を知ることのできない彼ですが、実に生一本でさっぱりした江戸っ子らしい性格に好感が持てる、好人物です。
また、永倉新八が話の中心なので、その周りの人物も、原田佐之助や藤堂平助といった面々でこれもまた興味深く、面白く読むことができました。
原田佐之助はなんとなく今まで持っていたイメージ通りという感じでしたが、藤堂平助が気取った美男子として描かれていて、これはちょっと意外な感じでした。
逆に近藤、土方、沖田などは影を潜めて、ほとんど出てこないんですね。
永倉からしてみれば、わりとそういう距離感だったのかもしれないなとも思いましたが。
主人公の永倉が好意的に描かれているのに対して、近藤は田舎者の成り上がりのように描かれていて、ちょっとかわいそうな感じです。
そのぶん、永倉と近藤の変化の対比がよりくっきりしてくるのですが。
また、池波正太郎の持っている幕末の歴史観も興味深いものがあります。
永倉新八に言わせている科白でこういうのがあって、
「なあに、明治維新なんてものはね、つまり薩長たち雄藩と徳川の争いさ。今のような文明開化の世が来たのも、そいつは時勢というやつでね。つまりは日本国民がえらいのだよ」
これはなかなか面白いな、と思います。
永倉新八の往年のエピソードがまた良い。
さすがに一流の剣客。
孫ができる歳になっても、そこらのチンピラぐらいは片手でひねり、気合で追い払ってしまう。
いいですねぇ、僕もこんなじいさんになりたいです(笑)












