
ザ・オーディション
演劇の先生に薦められて早速読んでみたのですが、これは演じるということやっている人は読むべき本だと思います。
これはハリウッド・ブロードウェイのオーディションで俳優たちを見てきた著者が、オーディションで合格するための指針について書かれた本です。
ですが、書かれていることは演技の基本で、最も重要なので、オーディションを受ける予定がなくても非常に勉強になります。
特に第2章の「12のガイドポスト」は演技クラスで常に言われていることそのものです。
12のガイドポスト
1. 人間関係
人間関係は、演技の中心である。とても大切な基本だ。
あなたは息子役で、相手は母親役だとか、恋人同士だとか、あなたは夫役で、相手は妻役だとか。しかし、事実だけで不十分だ。事実上の関係を見つけたら、相手役に対して「どう感じているか」を表現する必要がある。ほかのキャラクターに対しての、あなたの感情や態度を、自分自身に質問しよう。
2. 葛藤 ー キャラクターが戦っているもの
「ゴール」や「モチベーション」や、決まりきった演技表現を使う代わりに、「キャラクターの葛藤」を考えてみよう。
それぞれのキャラクターは内面で戦い、お互いはぶつかり合い、目的を達成するためにバランスをとる。
俳優は葛藤を求める。葛藤はドラマを作る。芝居は、日常の幸福や平穏の瞬間を描いているのではない。驚くほど並外れたものについて、普通でないものについて、その最高点を描いているからだ。
3. モーメント・ビフォー(その場面以前に起こったこと)
芝居の始めの部分、中間部、終わりの部分、どんな場面でも、その前には何かが起こっていたはずだ。
モーメント・ビフォーには感情が必要だ。知性ではない。知性は俳優の感情を見つけるときにだけ使えることで、それでは決して十分ではない。つまり、モーメント・ビフォーはこうあるべきと考えるだけでは、十分ではないのだ。感情は少しずつ染み込むもので、その感情におぼれてこそ、いい演技をすることができる。
4. ユーモア
ユーモアは「面白いことをやらかそう」ということではない。人間同士が、できるだけ関わろうとする交流である。だから、ユーモアのないところにもユーモアは存在する。
5. 反対の気持ち
シーンのモチベーション(動機づけ)を決めたら、それと反対のものも取り入れるべきだ。
言行一致は演技をつまらなくする。ほかの人間について、特にすばらしい俳優に、わたしたちが魅了されるのは、彼らの矛盾や反対のことの用い方だ。
人間について考えてみよう。心の中には、愛、憎しみ、創造性がある。そして、それと同じだけの自己破壊的な傾向もある。活動していないときとしているとき、夜と昼、晴れやかな気分とむかつく気分、愛する欲望と破壊する欲望の両方がある。これらの両極端な気持ちは、それぞれの芝居のキャラクターにもあるはずだ。
反対の気持ちは葛藤を膨らませ、ドラマを生む。それによって芝居は面白くなる。
6. 発見
発見は自分自身に関してかもしれないし、自分以外のキャラクターに関してかもしれない。もしくは舞台にいない誰かについてかもしれない。
芝居中で発見ができたら「わたしたちが毎日していること」は少なくなり、もっと芝居は面白くなるだろう。
7. コミニュケーションと競争
コミニュケーションは一方通行ではない。循環するものだ。
送る側と受ける側の、両方の立場を絶えず演じなくてはならない。
あなたが発信したことは、あなたの元に戻ってこなくてはならない。この循環が完璧でないと、コミニュケーションの次の段階に進むことはできない。
コミニュケーションの基本は、聞いてもらいたいと思うことと、コミニュケーションすることによって、あなたと相手の関係が、変わってほしいという希望である。つまり、コミニュケーションは、相手に変化してほしいという欲望なのだ。
8. 大事なこと
芝居は、人生のいちばん大事な瞬間について書かれている。月並みで退屈な、日常についてではない。観客は外出してまで、平凡な物語を見たいと思うだろうか?
9. イベントを探す
俳優は、キャラクターの感情や、キャラクターの生活のことばかりを考えて、芝居の中で何が起こるかについて忘れてしまう。芝居の中で起こる事件のことを「イベント」と呼んでいる。俳優の重要な役割は、芝居のイベントを創ることだ。
10. 場所
地理上や言葉上だけの場所は重要ではない。どこでイベントが起こったか? この人間関係の中で、何に対して戦っているかを創るためにはどんな場所がいいか? 想定できる場所にどんな感情を使うことができるか? この質問をすることが大事だ。
11. 役を演じる・駆け引きをする
あなたが両親の前にいるときは、息子を演じるだろう。ガールフレンドの前では恋人を演じるだろう。この二つのキャラクターは違うはずだ。彼女が欲しいのは誰だろう?彼女が欲しいのは恋人だ。だからあなたはそれを演じる。彼女がなってほしいと思っている役だからだ。彼女を愛しているので、偽りなしで本当に演じるだろう。これが役であり、真実、誠実の駆け引きである。
あなたを取り巻く人間関係の中では、いろいろな役柄を演じなくてはならない。すべての状況は、違うルールの違う駆け引きである。すべて真実だし、すべて意味がある。
12. ミステリーと秘密
どんなに他者を理解したと思っても、そこにはいつも理解できない、他者の心と頭脳が動いている。だからそれを予想することしかできない。反対に、どんなに自分のことを説明しても、どんなにオープンでいても、説明できない何か、隠れいている何か、自分自身が分かっていない何かがいつもある。
この不思議を、演技に加えよう。